- 年数が経過した腕時計だから防水性が気になる…
- 最近ガラスが頻繁に曇るけど防水性が落ちた?
腕時計のパッキンには、水やゴミの侵入を防ぐ効果があります。古いパッキンのまま放置すると、水やゴミが入りやすくなり、機械が故障する可能性が高まります。
この記事を書いた人

モリオ
- 時計店で10年勤務
- 毎日10本以上の腕時計に触れ、電池交換や修理に対応
- セイコー・シチズン・カシオなど国産腕時計の知識が豊富
- 初心者にもわかりやすく解説するのがモットー
この記事では現役の時計屋の私が、腕時計のパッキンを自分で交換する手順を解説します。記事を読めば、失敗しないパッキン交換の仕方がわかります。




パッキンの交換頻度やサイズの測り方についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください!
腕時計のパッキンの2つの役割
引用:防水性能|SEIKO
腕時計のパッキンには以下の2つの役割があります。
- 防水性を保つ
- ほこりやゴミの侵入を防ぐ
パッキンは裏蓋だけでなくりゅうずやガラスにも使用されますが、基本的に自分で交換できるのは裏蓋のみです。
防水性を保つ
腕時計のパッキンの最大の役割として、水が入らないよう防水性を保つことがあります。ケースと裏蓋の隙間をパッキンが埋めてくれるので、時計内部に水が染み込まない仕組みです。



パッキンがあることでサビや腐食を防いでくれるので、腕時計を綺麗な状態に保てます。一般的にはゴム素材のパッキンが使用されることが多いです。しかしグッチやカルバンクラインなどの海外時計には、プラスチック製のパッキンが入っていることもあります。




パッキンは細くて小さな部品ですが、入っているかどうかで大きく腕時計の状態が異なります!
ほこりやゴミの侵入を防ぐ
パッキンは防水性を維持するだけでなく、ほこりやゴミの侵入も防ぎます。パッキンがあることでほこりやゴミが入りづらくなるので、内部の機械や文字盤が劣化しづらいのです。
ほこりやゴミが内部に蓄積すると歯車の噛み合わせが悪くなったり、内部のネジが変色したりする可能性もあります。放置すると分解掃除(オーバーホール)する必要が出てくるため、定期的なパッキン交換は必須です。
腕時計のパッキンの交換頻度は2〜3年程度



一般的に腕時計のパッキンの交換頻度は2〜3年程度が推奨されています。定期的にパッキンを交換することで、内部の機械を綺麗な状態に保てます。
防水性能を保つために定期的(2~3年に一度)なパッキングの交換をおすすめしております。
腕時計の使い方にもよりますが、水や汗が頻繁につくようなら劣化のスピードは早まるでしょう。一方であまり使用しない場合は劣化しづらいため、3年以上経過してもパッキンが綺麗なことも多いです。
防水性が気になる方は電池交換のタイミング(2〜3年程度)でパッキン交換するのをオススメします。
腕時計のパッキンを交換する際のサイズの測り方
腕時計のパッキンのサイズを測るには、ノギスと呼ばれる道具があると便利です。ノギスとはパッキンの大きさを簡単に測れる測定器のことです。



まずはノギスを利用して裏蓋の内径のサイズを測ります。外径ではなく内径で判断する理由は、外径だと合わせたときにサイズが大きくて上手くパッキンが入らない可能性があるためです。



パッキンを裏蓋にかぶせたときに少し小さいくらいがベストなサイズです。



なお、ノギスがない場合の対処法として定規を使うこともできますが、より正確に測りたい方はノギスの購入をオススメします。




ノギスは Amazonで1,000円程度で販売されているのでチェックしてみましょう!
腕時計のパッキンを自分で交換する手順



腕時計のパッキンを自分で交換するには、以下の4つの手順に沿って行います。
- パッキンの種類を確認する
- 裏蓋のサイズに合ったパッキンを選ぶ
- パッキンにグリスをつける
- 裏蓋を締める
パッキンの種類を確認する
まずは裏蓋を開けてパッキンの種類を確認します。パッキンがゴム製かプラスチック製か確認し、ゴム製であれば「丸型」なのか「平型」なのかもチェックしましょう。



通常丸型のパッキンが使用されることが多いですが、稀に平型が使用されます。腕時計に適したパッキンを使用しないと、防水性が保たれないことがあるため注意が必要です。
裏蓋のサイズに合ったパッキンを選ぶ
パッキンの種類が確認できたら、裏蓋のサイズに合ったパッキンを選びます。裏蓋の内径をノギスか無ければ定規で測り、裏蓋に対して少し小さめのパッキンを取り付けましょう。大きめパッキンを取り付けることは、パッキンがはみ出す可能性が高いためNGです。



なお、パッキンの大きさだけでなく太さもモデルによって異なります。太すぎると裏蓋が閉まらなくなりますし、細すぎると水やゴミが侵入しやすくなります。お持ちの腕時計のパッキンと同じような太さを選ぶのが重要です。
パッキンにグリスをつける
パッキンには可能であればグリスをつけることがオススメです。グリスで完全に水を防げるわけではありませんが、つけた方が水やゴミが入りにくくなります。



さらにグリスをつけることで、裏蓋が締まりやすくなる効果があります。グリスが裏蓋とケースの摩擦を少なくしてくれるため裏蓋が締まりやすいです。
裏蓋を締める
裏蓋にパッキンを取り付けたら最後に裏蓋を締めます。締める際にパッキンがはみ出ないように注意してください。
はめ込みタイプであれば、裏蓋がりゅうずに当たらないよう溝を見ながら締めます。



スクリュータイプは専用の工具を使用して裏蓋を締めます。しっかり締まったことを確認するには、人差し指と中指の2本で裏蓋が動かなければ大丈夫です。締めすぎると裏蓋やケースが擦り切れるリスクがあるため、ほどほどの力で締めましょう。



腕時計のパッキン交換料金と購入する方法



パッキンは500円〜1,500円程度でAmazonや楽天といった通販で気軽に購入できます。数本セットになっているため、一度買えば何度かパッキン交換が可能です。
一方時計店でパッキン交換する場合、パッキン1本と工賃に対して最低でも500円以上の料金がかかります。自分で購入して交換するのと比べると割高な印象です。
裏蓋を開ける工具も揃える必要はありますが、自分で作業できれば時計店へ行くよりもお得に交換できます。DIYが得意な方や、安い腕時計だから少々傷がついても問題ないと考えている方は、自分でパッキン交換するのもありです。
腕時計のパッキンを交換する際の3つの注意点



腕時計のパッキンを交換する際の注意点は以下の3つです。
- パッキンのサイズを間違えると故障の原因になる
- 裏蓋についているサビやゴミを落としてから交換する
- 完全に防水が復活するわけではない
パッキンのサイズを間違えると故障の原因になる
パッキンのサイズを間違えると故障の原因になります。隙間から水やゴミが侵入することで、内部の機械に悪影響を及ぼすためです。
「パッキンのサイズの測り方」でもお伝えしたように、裏蓋に対して少し小さめのパッキンが最適なサイズです。適当にパッキンを選ぶのではなく、きちんと内径を測ったうえで取り付けるようにしましょう。
裏蓋についているサビやゴミを落としてから交換する
古い腕時計の場合、裏蓋のパッキンをつける部分にサビやゴミなどの汚れが付着していることが多いです。汚れがついたままパッキンを交換すると、きちんと密着せずに隙間が空く可能性が高いので、綺麗に掃除するようにしてください。



汚れを落とす際は、歯ブラシを使用することがオススメです。歯ブラシであれば裏蓋に傷がつくことも少なく、汚れもしっかり落とすことができます。




なるべく汚れがついていない状態でパッキンは交換するようにしましょう!
完全に防水が復活するわけではない
パッキンを交換したからといって、新品のときのように完全に防水が復活するわけではありません。防水性が低下する原因は、パッキンだけの問題ではなくケースの摩耗や劣化も影響します。
古い腕時計であるほど防水性は落ちるため、「パッキンを交換したのに水が入った」という事例は多々あります。完全に元の防水性に戻すためには、メーカーまたは修理専門業者に依頼することです。新品時の防水性に復活させたい方はプロに相談することをオススメします。
腕時計のパッキンが劣化する3つの原因



腕時計のパッキンが劣化する原因は主に以下の3つがあります。日頃から使い方に気をつけることで、パッキンを長期間綺麗な状態に保てます。
- 高温の場所で保管している
- 入浴時に腕時計を着用している
- 海で使用したらそのままにしている
高温の場所で保管している
腕時計を高温の場所で保管していると、熱によってパッキンが変形する可能性があります。特に直射日光が当たる場所での長時間の保管や、夏場の車内に置いておくと劣化するスピードが早まります。
腕時計の保管場所は、高温多湿を避けた風通しの良い場所が理想です。気になる方は腕時計専用ボックスに入れて保管するのもありです。しかし、直射日光が当たらず湿気が多い場所でなければ、そこまで神経質になる必要はありません。
入浴時に腕時計を着用している
入浴時に腕時計を着用している場合、石鹸の成分によってパッキンの劣化が早まります。さらに熱いお湯がかかることによって、変形することにも繋がります。
パッキンだけでなくケースやベルトの腐食・サビにも繋がるため、入浴時の着用は避けることが賢明です。防水性の高い腕時計であっても熱いお湯には弱いです。
海で使用したらそのままにしている
海水に含まれている塩分はパッキンを劣化させる原因となります。そのまま放置しておくと、パッキンの弾力性が失われて防水性が低下します。
少しずつパッキンが劣化することで「今までは大丈夫だったのに水が入るようになった」といった状況になりかねません。パッキンを長持ちさせるためには、海で使用した後は真水で洗い流してからきちんと乾かすことです。
まとめ:腕時計の防水性を保つためには定期的なパッキン交換が必須!
腕時計の防水性を保つためには、定期的なパッキン交換が必須です。年数が経過するごとにパッキンは劣化し、防水性が徐々に落ちていきます。腕時計の使い方によってパッキンの劣化スピードは異なりますが、電池交換するタイミング(2〜3年程度)で交換しておくと安心です。
注意点として、パッキンのサイズを間違えると水やゴミが侵入しやすくなります。必ず裏蓋のサイズに合ったパッキンを取り付けるようにしましょう。そしてパッキンを交換したとしても、新品時の防水性には完全に戻らないことも覚えておく必要があります。
裏蓋を開けたり、パッキンを用意したりするのが面倒な方は、メーカーや時計店に依頼した方が簡単です。しかしDIYに自信がある方や、費用を節約したい方は、本記事を参考にパッキン交換にチャレンジしてみてください。